テスト後すぐに暗記内容を忘れてしまうのは「ゼイガルニク効果」

 ■行動心理学

「ゼイガルニク効果」とは何か

 

あなたはこのような経験はないでしょうか。「試験に向けて何度も暗記を繰り返し、しっかりと記憶に定着させることができていた。勉強の甲斐あって覚えた内容はテストで漏れなく記入することができた。それなのに、たった数日でしっかりと記憶していたはずの内容を忘れてしまっていた。」

このように、達成できた事柄を記憶に留めるのが難しく、達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを覚えている傾向が強いという現象のことゼイガルニク効果と呼びます。「目標が達成されない行為に関する未完了課題についての記憶は、完了課題についての記憶に比べて想起されやすい」ということです。

旧ソビエト連邦の心理学者ブリューマ・ゼイガルニクがこのことを実験的に示しました。このメカニズムはブリューマ・ゼイガルニクの名を取って、「ゼイガルニク効果」、「ツァイガルニック効果」、「ツァイガルニク効果」とも呼ばれます。

 

メモを取った内容は忘れてしまいやすい

私たちは、まだ完了していない課題を忘れることはあまりありません。進行中の課題は繰り返し意識にあがり、つきまとうかのように強引に私たちの注意を引きます。しかし、一旦完了してしまうとその課題はすぐに記憶から消滅してしまうのです。

ゲシュタルト心理学者クルト・レヴィンは「人は欲求によって目標指向的に行動するとき緊張感が生じ持続するが、目標が達成されると緊張感は解消する」と述べています。
「覚えている」状態というのは、緊張しているということなのです。

カナダのマウント・セントビンセント大学の“メモを取った場合の脳の働き”に関する研究によると。メモを取った場合、脳はその情報を意図的に忘れてしまう可能性があるとのことです。

理由としては、覚えたい情報が書きとめられ別の場所に保存されていると認識することによって、脳の緊張状態が解かれるからです。ゼイガルニク効果の観点から考えると、覚えておくべき内容のことでもメモを取ることが目的となってしまい、完了した課題と認識してしまうことが原因と考えられます。

 

心残りは後悔として記憶されつづける

「ゼイガルニク効果」によると、達成できたことや、満足したことは脳の緊張状態が解かれて忘れやすくなります。それに反して、未達の問題や、物足りなかったこと(中断したこと)については、比較的記憶に残りやすくなるといえます。

それは人間関係でも同じです。

例えば、
会話が盛り上がっているタイミングで、「そろそろ失礼いたします。」とあなたが言えば。どうなるでしょうか。
きっと、相手は“物足りなさ”を感じるに違いないでしょう。もっと話をしたいという気持ちは強く記憶に残ります。
まだまだ話し足りない相手は、満足いくまで会話できなかったことが記憶(後悔や物足りなさ)として残り続けるからです。
そのため、あなたが「また今度ゆっくりお話しましょう。」と言えば、相手はOKしてくれる可能性が高くなります。

今までに好意を寄せているお相手に話しかけることができなかった経験はないでしょうか。淡く苦い思い出として、今も思い出すことができるはずです。それも心残りとなっている未達の問題や、物足りなさとして脳に記憶されているからです。

 

続きはCMの後のワナ

記憶に残るという心理現象をうまく利用して、テレビ番組でも「ゼイガルニク効果」は頻繁に見かけることができます。

面白そうなテーマに入るタイミングで「続きはCMの後!」などのように途中コマーシャルが入るケースがよくあります。続きの内容が気になってテレビから離れられないということはないでしょうか。
もしも続き見ることができなかった場合は、ずっと結末が気になってモヤモヤして仕方がないはずです。

最近では、ストーリー仕立てのコマーシャルで「続きはWEBで」などのように、結末は公式ホームページでみてくださいね。と検索を煽るようなものも出てきました。

これは、「ゼイガルニク効果」の記憶の残りやすさを上手く商用利用したケースと言えます。

 

まとめ未完了の問題や中断している作業についての記憶は、完了したものに比べて残りやすい。

対人関係においてもゼイガルニク効果を上手く利用することで、相手の記憶に残すことができる。

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