情報社会の罠「情報バイアス」で正しい判断ができなくなる理由

 ■行動心理学

「情報バイアス」とは何か

 

情報バイアスとは、判断する際に必要以上の情報を得ることにより判断の質が下がってしまうバイアスのことです。必ずしも情報が多い方が正しい判断ができると言えるわけではなく、情報の過多は、迷いや混乱を引き起こし、“正確な判断”や“素早い判断”をできなくします。

1990年以降、インターネットや携帯電話の普及、情報技術の革新に伴い情報社会という言葉が生まれました。
今まで調べ物をする時は、一つの答えを得るまでに時間がかかりました。例えば、英単語の意味を調べたい時は英和辞書のページをアルファベット順にめくる必要があり、最新の経済状況を知りたいのであれば経済新聞を読んだり、ニッチな情報に関しては専門書などからも調べる必要がありました。
しかし情報社会の今、インターネットの普及によって自宅にいながら多くの情報・知識を収集することができます。新聞や辞書、専門書などで情報を得なくとも、手元のスマートフォンで検索すれば30秒足らずで答えを得ることができてしまうのです。

情報バイアスは、このようなインターネットの普及による情報収集の手軽さや過度な情報供給から発生した、最近認識されるようになったバイアスと言えるでしょう。

 

情報量の差によって起こる判断の違い

マックス・プランク研究所のゲルト・ギーゲレンツァー博士が行なった実験が有名です。

「サン・ディエゴと、サン・アントニオでは、どちらの街の方が人口が多いでしょう。」

上記のようなアメリカの都市についての質問を、アメリカのシカゴ大学と、ドイツのミュンヘン大学の学生達に投げかけて回答内容を分析しました。※正解はサン・ディエゴ

この質問の両大学の学生の回答を見ると、シカゴ大学の生徒の正解率は、アメリカの街の人口に関する質問であるにもかかわらず、ミュンヘン大学の生徒よりも低かったのです。シカゴ大学の生徒は、両方の都市を知っていたがため判断に迷う部分がありました。ただ、ミュンヘン大学の生徒はサン・ディエゴの名前を聞いたことがあったものの、サン・アントニオを聞いたことがなかったため、単純に名前の知られているサン・ディエゴの方が人口も多いと判断したのです。

アメリカのシカゴ大学の生徒は情報量が多かったため、間違える確率が高くなってしまったのです。

 

なぜ情報バイアスは起きるのか

人は仕事や生活の中で、数多くの情報に接しています。2020年の統計によれば、スマホの普及率は50代未満で9割以上、全世代で見ても6割以上の人が利用しています。それだけ多くの人々が情報を簡単に得ることが出来るようになったということです。

人間は常に情報を分析し解釈して、次に取るべき行動を決めています。そして、何か大きな判断を行う時は、失敗をしたくない、損失を被りたくないという心理から安心できるまでたくさんの情報を集め総合的に判断したいと考えます。

適切な意思決定を行うために「情報は多いに越したことはない」というのは間違いありませんが、集めた情報の中には誤った情報や、実はそこまで重要ではなかった情報も含まれてくるでしょう。

当初自分が正しいと感じていた回答も、多すぎる情報や意見に触れてしまうことで、判断材料の優先度や情報が混ざり合い総合的な判断に混乱が生じてしまいます。

 

まとめ

情報が多いからといって質の高い判断ができるわけではない。

知らなくても良い情報に価値はなく、必要以上の情報を仕入れることで判断の質を下げることを避ける。

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