独自サービスで激戦市場を避ける「ブルー・オーシャン戦略」

 ■フレームワーク

「ブルーオーシャン戦略」とは何か

活用タイミング市場競争激化による収益の低下に悩んでいる時
今後競合増加の可能性があり将来的な成長見込みがない時

ブルーオーシャン戦略とは、既存市場での競合同士の競争(価格競争・品質改良など)から離れ、独自のサービスを創造して競合企業が存在しない安定した収益を狙う戦略です。フランスの大学院教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュにより、2005年2月に発表された著書『ブルー・オーシャン戦略』で提唱されました。

 

ブルーオーシャンとレッドオーシャン

ブルーオーシャンとは穏やかな海のように未開拓で無限に広がる可能性を秘めた新市場を表しています。企業間のシェア争いがなく、利益率も高く安定しているイメージとなります。

その反対の意味として、競争の激しい血みどろの市場をレッド・オーシャン(=血の海)という概念が存在します。企業がひしめき合い、利益率を削って競争を行う必要があり、事業を拡大することが難しいイメージとなります。

レッドオーシャンでは、コモディティ化(個性を失い大差がなくなる状況)なども進みやすく、継続的に安定した利益を上げることは困難です。

 

レッドオーシャンとの戦略の違い

レッドオーシャン市場は長期的な成長見込みが薄く、企業競争も激しいためネームバリューのある大企業以外は長期的な生き残りが難しい市場となります。

その反面ブルーオーシャン市場は競争がないため、創出することができれば初期は独占的な収益を得ることができます。

 

ブルーオーシャン戦略の事例

とはいえ、競合相手のいないブルーオーシャン戦略は市場を発見すること自体が非常に困難です。現行商品の真逆の商品がブルーオーシャンとなるわけでもなく、アイディアと創造性喚起によって見つけるしかありません。

ブルーオーシャン戦略として有名な成功事例として、チェーン展開している理髪店として知名度の高い「QBハウス」があります。カットのみ10分1000円の新サービスを実施しました。1996年時、普通の理髪店では、カラーやパーマなどのサービスも提供していました。そんな中、カットのみシャンプーもなしでの市場進出はブルーオーシャン戦略の一つと言えます。

また、アメリカの企業「Uber (ウーバー)」もブルーオーシャン戦略で成功した企業と言えます。メイン事業は世界70以上の国や地域でサービス展開している自動車配車サービスですが、日本では「Uber Eats (ウーバーイーツ)」の方が有名でしょう。もともと日本でも飲食店自身で配達を行う文化がありましたが、飲食店によっては配達のための従業員を雇うことなどが難しいケースも多いため、一部の飲食店だけに限られていました。その状況に対してUber Eatsは配達パートナーを利用することで、どのような飲食店でも加盟すれば配達が容易にできるシステムを提供したのです。

 

戦略のデメリット

新市場の発見さえできれば必勝と思えるブルーオーシャン戦略にもデメリットはあります。

 

開発までに時間や資金の余裕が必要

今まで市場ににないサービスを生み出すためには、資金だけではなく時間も多く要することになります。経営資源の豊かな大企業にとっては開発までの時間や資金の余力があるため取り組みやすいですが、キャッシュフローに余裕がない企業ではすぐに利益を上げる戦略が求められます。そのため、新サービスの開発や、それに伴う資金などの投資に余裕のない中小企業や個人事業主にはやや取り組みにくい戦略とも言われています。

 

売るスキルが必要

ここでいう「売るスキル」というのは、マーケティング能力のことを指します。いくら新しいサービスや製品を思いついたとしても、それを世間に知ってもらえなければ意味がありません。今まで市場にないサービスの良さや、仕組みをユーザーに知ってもらうためにはそれだけ認知してもらうためのマーケティング活動が必要です。もしマーケティング知識がなければ、事前にどのように世間に認知してもらうかを考える必要があります。その際、経営コンサルタントなどに相談してもよいのですが、注意点としては他企業にブルーオーシャン戦略のネタとなる情報が漏れないように情報管理を徹底することです。

 

模倣されるリスク

新たな市場を創造するブルーオーシャン戦略ですが、新たな市場がいつまでも新しいものかと言えばそういうわけではありません。成長して規模を拡大させることができた場合、他の企業が同じような事業を立ち上げ、その市場に参入してくる可能性が非常に高いです。そのため新しい市場を開拓することを目標とするのではなく、市場環境の変化に対応していくことが大切です。その場合、特許を取得することで優位性を保つことも良いかもしれませんし、今後競合が増えると想定される場合は企業合併や売買(M&A)してしまうのも一つの方法かもしれません。

 

ブルーオーシャンの見つけ方

ブルーオーシャン戦略には、「アクション・マトリックス」と呼ばれる概念が存在します。
アクション・マトリックスは、「減らす」「取り除く」「増やす」「付け加える」の4項目に注目し、ブルーオーシャンを創造できるかを模索する作業です。既存サービス内容と照らし合わせることで、ブルーオーシャンを生み出す余地を探ります。これはブルーオーシャン戦略にとって重要な概念であり、ただ単に新しいサービスを創造するよりも、着手しやすい方法であると言われています。ゼロから突拍子もないアイディアを創造せずとも、アクション・マトリックスを用いて既存サービスに他価値を追加することで、新たなサービスを創造できるいうことです。

2000年以降急速に発展し始めたテクノロジーの進化に伴い、ユーザーの興味嗜好や価値観はますます多様化しました。そのため時代の流れ(トレンド)を読んで企業経営をすることは非常に難しい世の中であることは確かです。ですが、このように時代の流れが激しい世の中であるからこそ、新しいサービス創造の可能性が高いということでもあります。

例えば、一昔前はお気に入りの写真をSNS投稿することが主流でしたが、現在では動画編集技術アプリが進化したため一般ユーザーでも凝った編集をSNS投稿することが主流となりつつあります。
このようにブルーオーシャンは、テクノロジーの進化とともに生まれてくるのです。

また、世界に目を向けるとブルーオーシャンが存在するかもしれません。既に日本では当たり前になっている製品やサービスでも、他の国ではまだ普及しておらず、そのまま持ち込むだけで大きなシェアを取ることができる可能性もあるでしょう。

 

ワンポイント
  • 時代の流れを感じ、不便さや新しいテクノロジーを組み合わせてアイディアを創出する。
  • 日本国内ではレッドオーシャンの事業だとしても、海外ではまだブルーオーシャンの可能性がある。その逆も然り。

 

 

 

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