長時間の会議は「決断疲れ」を起こし誤った結論を生む

 ■行動心理学

「決断疲れ」とは何か

 

「決断」や「判断」をすることは非常にエネルギーを使う作業です。比較し、吟味し、決断をすると脳に疲労が蓄積されていきます。研究者たちは、そういう状態を決断疲れと呼びます。

私たちは、普段から色んな選択、意思決定をしています。無意識の選択も含めると1日に60,000回もの決断をしていると言われています。仕事の場だけではなく、着ていく服、持っていく物、何を食べるかなど、普段無意識に行なっている行動も決断です。

脳はグルコースという形で1日当たり350~450kcalを消費しており、これは人体の基礎的な消費カロリーの20~25%を占めています。
人は無意識な決断も含めて大量のエネルギーを消費して疲れてしまうのです。

 

成功者が行なっている決断疲れの回避

アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズは、いつも同じ黒のタートルネックにジーンズ、足下はスニーカーというスタイルを貫いていました。それは何故でしょうか?
ストレートに答えを言ってしまうと、それは、「決断の回数を減らすため」だからです。多くの成功者は「決断疲れ」を理解しており意識して回避しているのです。

無意識だとしても小さな決断を繰り返すと、いざという時の、大きな決断の正確性が下がってしまいます。それを回避するために、成功者たちは「決断の回数を減らす」努力、習慣を身につけています。

またFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグも毎日決まったグレーのTシャツや、黒のパーカー、ジーンズを身にまとっています。ザッカーバーグは、以下のように述べています。
「僕は社会への貢献に関係しない決断はできるだけ下さないようにしている。実はこれは多くの心理学的な理論に基づいていることで、何を食べるか、何を着るかなどのたとえ小さな決断でも、繰り返し行っているとエネルギーを消費してしまうんだ。日々の生活の小さな物事にエネルギーを注いでしまうと、僕は自分の仕事をしていないように感じてしまう。最高のサービスを提供して、10億人以上もの人々を繋げることこそ、僕のすべきことなんだ。ちょっとおかしく聞こえるかもしれないけど、それがぼくの理由だよ。」

同じ服を着るように、毎日決断することを減らすと、無意識に増えていた判断の疲れ減らすことが可能なのです。

 

長時間の会議はおかしな結論に着地する

“問題解決のため長時間議論した結果、根本的な解決に結びつかない無駄なタスクが増えた。”
会社勤めをしたことがある人は、一度はこのような経験したことがあるのではないでしょうか。
これも「決断疲れ」が原因となっています。

あらかじめ1時間などのように時間を決めて行うことは時間管理をする上で大切なことです。ただし、問題の解決策が出てきたにも関わらず他のアイディアがないか更に模索することで決断疲れを起こします。その結果、これだという解決策が出ていたにも関わらず、終わりの方に出てきたあらぬアイディアが採用されてしまうことがあります。

大手IT企業などで取り入れられ始めた「スタンディング・ミーティング」には、さっとできる手軽さがメリットの一つと考えられています。実はその裏側には、短時間で会議を終わらせることによる「判断疲れ」の回避も含まれているのです。

 

ショッピングモールでレストランが行う役割

決断疲れをすることで脳は判別がつかなくなってしまい、大きな決断を回避する傾向があります。それは買い物に出かけている消費者にも同じことが言えます。

数万円の買い物をする時に、失敗はしたくないと数多くの商品を比較するのではないでしょうか。ただし、商品を選び続けることで正常な判断がつかなくなり、最終的には購入を諦めることも経験したことがあるはずです。これも決断疲れによって、リスクを伴う大きな決断を回避していることが理由です。

血糖値が下がりすぎると、意思決定の力は衰えます。

スウェーデンの家具メーカー「IKEA」はそのことをよく知っています。1万点もの商品が置かれた店舗では消費者は決断疲れを起こします。そのため、IKEAのレストランは店舗順路の真ん中に配置されているのです。疲れた脳を癒して「意思決定力」を取り戻してもらう。そして、今まで見てきた商品の購入決定をしてくださいね、という企業戦略なのです。

それは大型のショッピングモールにも同じことが言えるでしょう。食事の前に商品を見て食後に購入して帰ることは、同じように決断疲れからの回復を目論んでいるのです。

 

重要な決断は早い時間帯に行う方が良い

最後に決断疲れによる実際の例をご紹介します。

イスラエル刑務所で、拘留中の受刑者が裁判所に仮釈放を申請しました。
1人目(詐欺罪で2年5ヶ月の有罪判決):裁判所での審問開始時刻は、8時50分
2人目(傷害罪で1年4ヶ月の有罪判決):裁判所での審問開始時刻は、13時27分
3人目(傷害罪で1年4ヶ月の有罪判決):裁判所での審問開始時刻は、15時10分
4人目(詐欺罪で2年5ヶ月の有罪判決):裁判所での審問開始時刻は、16時35分

判事たちはどのような決断を下したでしょうか。

本来であれば、罪の重さや拘留期間などで判断されるべきはずですが、この検証では1人目と2人目の仮釈放が認められ、3人目と4人目の仮釈放か却下されました。
1日の中でも夕方に差し掛かるにつれて「判断疲れ」を起こし、仮釈放することの正確な判断ができなかったのです。その結果、仮釈放というリスクを伴う決断を回避して「現状維持」の決断を下したというわけです。

これは企業内でも言えることです。
もしあなたが、大きな予算の獲得のためプレゼンテーションする機会があるならば、上役たちが「判断疲れ」を起こしていない早い時間に設定することが好ましいでしょう。

 

まとめ多くの意思決定を行うことで脳は多くのエネルギーを消費し「決断疲れ」が引き起こされる。成功者たちはこの「決断疲れ」を回避するために無駄な意思決定を減らすことを習慣化している。

「決断疲れ」を回避することで、効率の良い仕事や交渉を行うことができるでしょう。

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