3つの選択肢を提示してユーザー誘導する「松竹梅の法則」

 ■行動心理学

「松竹梅の法則」とは何か

 

松竹梅の法則とは、3つの段階に分けられた選択肢から1つを選ぶ時、多くの人は無意識に中間のものを選ぶという心理傾向のことです。

例えば、焼肉食べ放題コースが、松(7,000円)・竹(5,000円)・梅(3,000円)だった場合、多くの客は中間の竹(5,000円)を選ぶ可能性が高くなります。実際、松竹梅3択の中で選ばれる比率は「松2:竹5:梅3」と言われています。

イギリスの童話『ゴルディロックスと3匹のくま』の中で、少女(ゴルディロックス)が3つの選択肢の「ちょうどいい(中間)」ものを選ぶストーリーから「ゴルディロックス効果」とも呼ばれています。

 

なぜ中間を選んでしまうのか

中間を選ぶ心理傾向を行動経済学では、「極端の回避性」や「妥協効果」と呼んでいます。

商品やサービスの価格帯が複数に分かれている場合、人は「安いものよりは、高い方が品質は良いはず」という思い込みが働きます。ただし、最も高いものに対しては「一番高いものは必要以上な気がするし、もしも期待はずれなら出費が痛い」という心理が働いて敬遠する傾向があります。

逆に、一番安いものに対しては、「一番安いものを選ぶことで、ケチや貧乏だと思われないか」という、世間体を気にしたり見栄を張る心理が働くと言われています。

そのため、選択肢が3つあった場合には“高すぎず安すぎず”の中間のものを選びやすくなるのです。

 

選択肢が2つの場合

もし、選択肢が2つだけの場合はどうなるでしょうか。

選択肢が2つだけの場合「高いもの」と「安いもの」を比較した時に、最も高いものは敬遠されることに加え、価格の安い方はお得感を感じて、安いものを選択する人が多くなります。

そのため、焼肉食べ放題コースにおいても、5,000円・3,000円の2種のコースのみだった場合、約7割の人が3,000円のコースを選ぶ可能性が高くなります。

 

選択肢が4つ以上の場合

それでは、選択肢が4つ以上ある場合はどうなるでしょうか。

選択肢は多ければ多いほど良いように思われます。ただ、お客が商品をまだ“買うか買わないか”を迷っている場合、4つ以上の選択肢を提示してしまうと「買わない」という選択をする可能性が高くなるのです。

様々な選択肢がある場合、人はすべての選択肢を考慮して一生懸命比較しようとします。ただ、多くの選択肢の中から選択することは脳の疲れ(決断疲れ)に繋がり、深く考えることを放棄してしまう傾向があります。

また、4つ以上の選択肢が存在すると、間違った選択をすることで被る損失を回避したいという心理によって「決定回避の法則」が働き、同じく決定をせずに持ち帰るという心理が働きます。

あなたも家電量販店でテレビを比較した時に、同じインチのテレビでも製造メーカーや搭載機能の選択肢が多かったことが原因で、その場で決断せず持ち帰って検討した経験はないでしょうか。

そのため、人が一度に比較するのは、3〜5までが好ましいということになります。

 

松竹梅の法則を用いた営業方法

「松竹梅の法則」の中間が選ばれやすい心理を利用すれば、営業活動で売上げアップを狙うこともできます。その方法は、最も売りたい(利益率の高い)商品・サービスが中間になるように、上位と下位の商品の金額を調整することです。

例えば、上位商品を20,000円、中間(最も売りたい)商品を10,000円、下位商品を8,500円というふうに、上位の商品価格を高めに設定して、下位の商品を「もう少し頑張れば中間商品を買える」程度の価格に設定します。そうすることで、お客を中間(最も売りたい)商品へと誘導しやすくなります。

また、商談のときにもコツがあります。それは、お客に商品を紹介する時、上位商品→下位商品→中間商品の順番で金額提示することです。
これは不動産業界で物件を紹介する時のテクニックとして実際活用されている方法です。最初に希望予算を超えるグレードの高い物件を見せます、お客は「魅力的だけど高額で手が出せない」となるため、次に一番安価な物件を見せます。「そこまでグレードを落とすのは嫌だと」という気持ちになった時に、最後に中間の物件を紹介するという手法です。すると、不動産側が売りたいと考えていた(中間の)物件に決まる確率が高くなるのです。

このように「松竹梅の法則」をうまく活用すれば無理強いせず自然に、売りたい商品へ誘導することができます。

 

まとめ

3つの段階に分けられた選択肢から1つを選ぶ時、多くの人は無意識で中間のものを選びやすい。そのため、松竹梅の法則を利用して、売りたい商品を中間に設定することでお客の選択を自然に誘導することも可能となる。

 

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